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「企業の研究者をめざす皆さんへ ―Research That Matters」読みました

読んだ本

企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters

企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters

どんな本

本書の著者である丸山宏さん(現在、PFNフェロー)は、26年の間日本アイ・ビー・エムの東京基礎研究所で働いていた研究者です。そんな丸山さんが、研究所の所長として過ごした最後の3年間に約160名の研究員に対して「研究のやり方」「キャリア形成の考え方」「ビジネスの方向性」などのトピックに関してのレターを社内ブログの形で発信していました。それらのレターを中心に企業の研究者およびそれを目指す人に向けての思い書いた本。

所感

先日の人工知能学会2019にて、丸山宏さんの講演*1を初めて聞いて、とても感動したという話をしていたら、この本を紹介して頂いたので読みました。 私が良い本でしたとかいうのはおこがましいですが、とっても良い本でした。 これからも定期的に読み返す本になると思います。

以下、特に心に残っている部分の感想を書きます。(全編良いのですが!)

皆さんには、このような、「気になる研究者」をいつでも持っていて、いつも気にしていてほしいと思います。皆さんの中で、目標にする研究者像というのがはっきりしている場合、つまり「私は○○さんのようになりたい」という人がいるのならば、それでいいです。そうでなくても、つまり「○○さんのようになりたい」と思わなくても、「少なくとも○○さんを越えるような研究者になりたい」という気持ちがあればよいと思います。最初はあまり高い目標でなくてもいい。皆さんの周りに、「あ、この人すごいな」と思わせる人がいたら、まずその人を目標にしたらよいと思います。その目標に向かって努力しているうちに、いつの間にか自分も成長して、より高い目標の人を探すことになるでしょう。-丸山 宏. 企業の研究者をめざす皆さんへ Research That Matters (Japanese Edition) (Kindle の位置No.230-236). Kindle 版. -

これは研究者に限ったことでは無いかもしれませんが、すごく大切な状態だと思って強く共感できました。私のまだまだ短い人生でも、頑張れる状態の時は必ずそういう人物がいる時でした。

私が会社に入って受けたプレゼンテーションの研修の中で、一番頭に残っていることは、「聴衆の興味を画面でなく、あなた自身に向けるようにしなさい」ということです。つまり、内容よりも人を売り込め、ということです。-丸山 宏. 企業の研究者をめざす皆さんへ Research That Matters (Japanese Edition) (Kindle の位置No.640-642). Kindle 版. -

プレゼンテーションについてのレターからです。私自身、今回の人工知能学会の講演を聞いて、内容と同じくらいかそれ以上に丸山さんという人間に関心が向きました。過去に面白いと思った発表は、いつも発表者に惹かれた時だと思います。私もそんな講演ができるように意識したいと思いました。

逆説的に聞こえるかもしれないが、私はキャリア・プランなどというものを信じていない。何歳までに何を経験し、何歳までにマネージャーになって、などとプランしていてもその通りになることはまずないだろう。それよりも、常に与えられたチャンスをつかまえて、その中で自分の価値を最大限に発揮していくことで周囲に認められ、結果的にキャリア・アップしていくものではないだろうか。-丸山 宏. 企業の研究者をめざす皆さんへ Research That Matters (Japanese Edition) (Kindle の位置No.903-907). Kindle 版. -

研究者のキャリアについてのお話しからです。これは特に共感できました。今まで何度も〇〇年後にこうなって、さらにその〇〇年後にと計画したことがありましたが、その通りになることはほとんど無いし、計画したこと自体も忘れてしまうようなことが多かったです。そんなではなくて、打算的に考えずにその時々の状態で与えられた機会に一生懸命取り組むことが、一番未来に繋がると思ってますし、今のところもそういう感じです。(確か、お笑い芸人の有吉さんもそんなこと言ってた気がします。)

問題は、このような「外向けの価値を高めながら、同時に、構成員が組織に所属していることの価値を感じることができる」、というバランスを達成することなのだと思います。良い研究成果を出すことによって自然と人が集まってくる、優秀な人が集まることによってより良い研究成果が出る、というポジティブフィードバックがかかるような研究所になれば、と心から思います。-丸山 宏. 企業の研究者をめざす皆さんへ Research That Matters (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1834-1837). Kindle 版. -

研究所の価値についてのお話しからです。研究チームが生み出す外向けの価値とチームの中にいる人が感じる価値があって、良い成果を出し続けるためにはそのバランスが大事ということだと読みました。当たり前なのかもしれませんが、私はそういうバランスが考えられなくなる時が多いので、忘れないようにしておきたいと思う考えでした。

*1:講演資料はここで確認できます

基調講演・招待講演 – JSAI2019